子供はもちろん、大人も夢中になるヤクルトの工場見学。無数のヤクルトが息もつかせぬ速さで、次から次へと流れていく様は圧巻だ。予約しておけば誰でも無料で参加でき、ヤクルトの試飲やお土産も。実際にどんな体験ができるのか、詳しく紹介したい。
工場見学の概要
福岡県筑紫野市にある「福岡ヤクルト工場」までは、福岡市内中心部から車で30〜40分。予約制のため、事前に申し込みが必要だ。(インターネット・電話・FAXにて受付)
見学内容
- 会社概要、商品説明、自工場生産製品の試飲
- ビデオ上映
- 生産工程見学
全体の所要時間は約60分。工場見学が可能なのは、月曜日から土曜日まで(日曜日と年末年始はお休み)で、9時00分から、11時00分から、13時30分からの1日3回。各回70名までとなっており、週末は定員に達することも多いので、早めに予約しておこう。
創始者の想いに心を打たれる
福岡ヤクルト工場に到着すると、まず目に入るのがこの銅像。誰だかご存知だろうか? ヤクルトの創始者であり、医学博士の代田 稔(しろた みのる)だ。そう、勘のいい人ならお気づきだろうが、「乳酸菌 シロタ株」の名前の由来となった人物だ。
今から100年近く前、まだ豊かとは言えない日本において、不衛生な環境から、腸の病気により命を落とす子供が多かったという。そんな中、当時医学生だった代田氏が目をつけたのが乳酸菌だった。何年にも及ぶ研究を経て、1930年に「乳酸菌 シロタ株」の強化培養に成功。1935年に「ヤクルト」を発売した。
興味深いのは、これを「薬」にはしなかったことだ。薬にすると、どうしても値段が高くなり、貧しい人には手が届かなくなってしまう。だから薬にはせず、たくさんの人に飲んでもらえるようにと、ジュース(飲み物)にしたそうだ。
退屈しない待合室
工場見学の開始時間までは、待合室で待機。ヤクルトスワローズのグッズやキッズスペースがあり、子供たちも退屈せずに過ごせる。
待合室には、シロタ株について学べる展示も。
嬉しいヤクルトの試飲
時間になると、展示パネルが並んだ通路を通って、大きなモニターのある部屋へ移動。
ここで会社や商品のことを学んだあと、約12分の子供向けアニメが上映される。子供が自然と夢中になれるストーリーになっていて、乳酸菌とビフィズス菌の働きや、好き嫌いをせずに食べることの大切さを教えてくれる。
また、こちらの工場で製造している「ヤクルト400」が1本ずつ配られ、ここで試飲することができる。ちなみに「ヤクルト400」は、1本(80ml)あたり400億個の乳酸菌 シロタ株を含み、スーパーなどの店頭では販売されていない商品だ。
歴史を感じる展示ルーム
続いて、展示ルームへ。
こちらは、初期に使用されていた「足踏み式充填機」。これを見たあとに現代の充填機を見ると、そのすごさがよくわかる。
ヤクルトの容器も時代とともに変化。筆者が生まれる前なので記憶にはないが、発売当初はガラス瓶だった。現在はもちろんプラスチック容器。この福岡ヤクルト工場では、その容器から製造している。
展示ルームでは、世界各国で放送されているヤクルトのCMを見ることもできる。これがなかなかユニークでおもしろい。
製造ラインは撮影禁止
展示ルームから工場内の見学通路へ移動。残念ながら製造ラインは撮影が禁止されているため写真がないのだが、言うまでもなく、ここが一番の見どころだ。
まずは成形機で容器を作り、ラベラーという機械で次々と容器にラベルをかぶせていく。これが目にもとまらぬ速さ。モニターでスローモーションの映像を見ると、その俊敏性と正確性に驚く。
充填機に進むと、容器にヤクルトの中身が入れられる。その速さは、1台あたり1秒に12〜13本。先程の「足踏み式充填機」とは比べ物にならない生産量だ。
こちらの工場では、1日に100万〜150万本のヤクルトを製造しているという。無数のヤクルトが次から次へと流れてくる様は圧巻で、普段はスーパーに並んだものしか見たことがない子供たちは、その膨大な量と速さに目を丸くしていた。
無料なのに記念品まで
お土産として今回いただいた記念品がこちら。
大人にはヤクルト・ジョアなどの空容器を再利用して作ったオープナー、子供には定規がプレゼントされた。
「社会科見学」というと、学校行事のイメージが強いが、ここでは親子で一緒に楽しみながら学ぶことができる。しかも、無料なのにヤクルトの試飲ができて、お土産までもらえる。スーパーでヤクルトを見かけたら、子供が「ヤクルト飲みたい!」と言い出すのは間違いない。
TEXT・PHOTO:山下侑一郎