佐賀県武雄市の御船山楽園では、『earth music&ecology チームラボ かみさまがすまう森』が開催中だ。50万平米の大庭園を舞台にした世界最高峰の屋外型デジタルアート展。圧倒的なスケールと最新テクノロジーによる演出で、観るものを神秘的なアートの世界へと誘う。オープンした最初の週末に早速行ってきたので、そのとき撮影した写真とともに、“見どころ” や “おすすめの回り方” などを紹介したい。
“世界1位” を獲得したアートインスタレーション
「かみさまがすまう森」は、チームラボが毎年夏に佐賀県武雄市の御船山楽園で開催しているアート展。今年で4回目を迎える。昨年は、世界最大のアート・デザイン・建築のデジタルメディアdesignboomで、「2017年のアートインスタレーション(TOP 10 art installations of 2017)」の世界1位に選ばれるなど、海外でも注目度の高いイベントだ。
1845年に開園した「御船山楽園」は、国登録記念物の名勝地。50万平米の広大な敷地には、四季折々の花が咲き、ツツジや紅葉の名所でもある。そんな大庭園が、夏の夜、神秘的なアート空間へと生まれ変わる。大自然とデジタルの融合によって生まれる幻想的な世界は今年も必見だ。
earth music&ecology チームラボ かみさまがすまう森
会期: 2018年7月19日(木)~10月28日(日)
会場: 御船山楽園
入場料: 大人1200円、中高生800円、小学生・未就学児無料
特にオススメの展示作品 3選
今年は、チームラボが取り組んでいる「自然が自然のまま アートになる」プロジェクトより、全17作品を展示している。どれも工夫をこらした魅力的な作品ばかりだが、その中でも特に感動した3作品をご紹介。
【見どころ1】
小舟と共に踊る鯉によって描かれる水面のドローイング
Drawing on the Water Surface Created by the Dance of Koi and Boats – Mifuneyama Rakuen Pond
teamLab, 2015, Interactive Digitized Nature, 13min 24sec, Sound: Hideaki Takahashi
池の水面にプロジェクションしている作品。背後には象徴的な御船山も見える。天気がよければ星空も美しい。自然とデジタルが見事に融合した壮観に、来てよかったと心から思える作品だ。ここでは、しっかり足を止め、水面の変化に注目してほしい。
あらかじめ完成された映像が繰り返し流れているわけではない。センシング技術により、それぞれの魚は、近くの魚のふるまいに影響を受けながら自律的に泳いでいるのだ。そして、小舟の動きにも影響を受ける。小舟が静かに浮かんでいると周りに集まり、小舟が動き出すと避けていく。あたかも、本当に生きている魚のように。
【見どころ2】
生命は連続する光 – ツツジ谷
Life is Continuous Light – Azalea Valley
teamLab, 2017, Interactive Digitized Nature, Sound: Hideaki Takahashi
続いては、御船山楽園の「つつじ谷」を舞台にしたこちらの作品。春には約20万本のつつじが絨毯のように広がるこの場所が、そのときとは全く違った表情で光り輝く。その光は、ゆっくりと呼吸するかのように明滅を繰り返し、じっと見ていると、自然と一体になったような感覚に陥る。
遠くから眺めるだけではなく、つつじ谷の中を歩いてみよう。人が近くを通ると、光と音が生まれる。そしてその光は、隣のつつじへと伝播し、放射状に広がっていく。
【見どころ3】
呼応するランプの森とスパイラル
Forest and Spiral of Resonating Lamps – one stroke
teamLab, 2018, Interactive Installation, Murano Glass, LED, Endless, Sound: Hideaki Takahashi
最後は、今年新たに加わったこの作品。6月にリニューアルした御船山楽園ホテルのロビーに設置されている。天井から吊るされた無数のランプは、延々と向こうまで続いているかのように見える。
近くに人が立ち止まると強く輝くランプの光。その光は、ふた手に分かれ、全てのランプを1度だけ通る一本の光のラインとなり、最後にまた最初のランプへと戻ってくる。人々の動きによって生まれる、そのとき限りの光の移ろい。ベンチもあるので、ゆっくりと腰を据えて観賞しよう。
おすすめの回り方

園内MAP(公式HPより引用)
広い敷地内に点在する17作品。会場で園内MAPを手渡されても、どう回るのが良いか悩ましい。そこで、1つの選択肢として、筆者おすすめの順路をここで紹介する。
<福岡TOUCH的おすすめ順路>
- たけお競輪第二駐車場に駐車
- ENTRANCE 2から入る
- 明るいうちに⑰と⑮を観賞
- 暗くなったら大楠の近くから③と④を観賞
- ENTRANCE 2の方に戻る
- ⑧⑦⑥⑤⑨⑩⑪⑫⑬⑭の順に回る
- ⑯を涼みながらゆっくり観賞
- ①②を観賞
- 最後にもう一度③と④を眺めて終了
所要時間は、ゆっくり回って1時間半〜2時間ほど。
ポイントは、開門時間が早い「第二入門口(ENTRANCE 2)」から入り、まだ少し明るくて人が少ないうちに屋内型の⑰と⑮を観賞。その後、反時計回りに回ること。この回り方なら、見どころの①を暗くなったクライマックスに持ってこられる。逆に時計回りだと、⑭付近の上り坂がきつく感じられるだろう。
※上記MAP上の番号は、会場で配られるMAPの番号と異なるので要注意。
駐車場とアクセス
利用できる駐車場は「たけお競輪第一駐車場」と「たけお競輪第二駐車場」の2つ。ただし、「たけお競輪第一駐車場」は、「たけお競輪第二駐車場」が満車になってからの誘導となるので、まずは第二駐車場に向かう。平日を除き、無料往復シャトルバスも運行しているが、シャトルバスは第二入門口には行かず、第一入門口に行ってしまう。
たけお競輪第二駐車場から御船山楽園第二入門口へは、徒歩で5分ほど。
入門口でチケットを購入し、御船山楽園の中へ。ここで園内MAPをもらうのをお忘れなく。ちなみに、お得な「前売りペアチケット」はすでに販売期間が終了している。
最初に観るべき2作品
前述した通り、まずは屋内型の2作品を観るのがオススメだ。開演直後はまだ日が沈みきっていないため、屋外の作品を観るには少し明るい。暗くなるころには人も増えてくるので、その前に以下の2作品を観賞しておこう。
【前述のMAP上⑰】
小さきものの中にある無限の宇宙に咲く花々
Flowers Bloom in an Infinite Universe inside a Teacup
teamLab, 2016, Interactive Digital Installation, Endless, Sound: Hideaki Takahashi
この作品は、「EN TEA HOUSE – 幻花庵」という茅葺き屋根のティーハウスで体験できる。この作品のみ有料で、「水出し茶」と「ゆず緑茶」がどちらも1杯500円。室内はバーカウンターのようになっていて、席数が限られる。人が多くなると待ち時間も長くなるので早めに体験しておくのがオススメだ。
暗い室内。テーブルにお茶が出されると、茶碗の中にきれいな花が咲く。
茶碗を手に取って動かすと、花は散り、花びらが一帯に広がる。そしてまた、茶碗の中には新しい花が咲く。お茶を飲み干すまで、花は咲き続ける。
【前述のMAP上⑮】
グラフィティネイチャー – 廃墟の湯屋に住む生き物たち
Graffiti Nature – Living in the Ruins of a Bathhouse
teamLab, 2017, Interactive Digital Installation, Sound: Hideaki Takahashi
油断すると見落としそうな入口。
中に入ると、大人も子供も夢中でお絵かきをしている。チームラボではお馴染みの光景だ。
さらに奥へ進むと、そこは廃墟となった湯屋。以前は男湯だったという。前室で描いた絵は、ここで魂を宿され、1つの生態系の中で生き始める。生まれた生きものは、他の生きものを食べたり、食べられたり。人の動きもその生態系に影響を与える。現実的でありながら幻想的な、不思議な空間だ。ちなみに、クーラーが効いているので、汗をかいた最後にここで締めるというのもアリだ。
注意点
最後に、これから行く人のためにいくつかアドバイスと注意点を。
◎動きやすい格好で
急な坂や階段の上り下りがあり、悪路もあるため、動きやすい格好で。特に、靴はスニーカーがおすすめ。
◎飲み物を持参
園内には自動販売機がないので、あらかじめコンビニなどで飲み物を買って持参しよう。大量の汗をかくので、熱中症には十分注意が必要。
◎虫除け対策も
自然豊かな庭園なので、虫除けスプレーなど、虫除け対策を忘れずに。
◎予習が大事
あらかじめHPで作品のポイントなどを読んでおくと、より一層楽しめる。
◎MAPは重要
見落としそうな作品もあるので、MAPで確認しながら回ろう。
◎撮影はマナーを守って
フラッシュ撮影、ドローンの使用は禁止。三脚の使用も控えよう。
◎雨の場合
小雨の場合は決行。台風などの強風を伴う強い雨の場合は中止。詳細は御船山楽園の公式HPやFacebook、Instagramで確認。
2018年 開催概要
earth music&ecology チームラボ かみさまがすまう森
会期: 2018年7月19日(木)~10月28日(日)
会場: 御船山楽園(佐賀県武雄市武雄町大字武雄4100)
入場料: 大人1200円、中高生800円、小学生・未就学児無料
時間:
7月19日(木)〜8月14日(火)
第一入門口 20:00〜22:30、第二入門口 19:00〜22:30
8月15日(水)〜9月9日(日)
第一入門口 19:30〜22:30、第二入門口 18:30〜22:30
9月10日(月)〜9月30日(日)
第一入門口 19:00〜22:30、第二入門口 18:00〜22:30
10月1日(月)〜10月28日(日)
第一入門口 18:30〜22:30、第二入門口 17:30〜22:30
※第二入門口は、第一入門口よりも1時間早く開門します。
※「小舟と共に踊る鯉によって描かれる水面のドローイング」は、第一入門口が開門するまでご覧いただけません。
[文・写真]山下侑一郎
