博多三大祭りのひとつ、筥崎宮放生会。約500軒もの露店が建ち並び、福岡に秋の訪れを告げる。放生会には毎年必ず行くという人も少なくないだろうが、ここで改めて、放生会の楽しみ方や豆知識を紹介したい。よくある放生会の疑問にも答えているので、参考にしてほしい。
もくじ
放生会とは…
もともと放生会とは、捕獲した魚や鳥などの生きものを池や野に放してやる宗教儀式のこと。しかし、福岡で「放生会」と言えば、ほぼ間違いなく、福岡市東区「筥崎宮(はこざきぐう)」で開催される放生会のことを指す。
毎年9月12日から18日までの7日間、約500軒の露店が参道に建ち並ぶ。期間中の来場者数は、のべ100万人。その起源は古く、今から千年以上前に始められたという記録も。春の「博多どんたく」、夏の「博多祇園山笠」と並び、博多三大祭りのひとつに数えられる。
「万物の生命をいつくしみ、殺生を戒め、秋の実りに感謝する」
それが、放生会というお祭りの意味だ。
読み方は、
ほうじょうえ? ほうじょうや?
辞書で調べれば、「放生会」の読み方は「ほうじょうえ」が正解だ。
しかし、福岡では「ほうじょうや」と呼ぶのが一般的だ。むしろ、誰かが「ほうじょうえ」と言おうものなら、「読み方、間違っとうよ」と言われかねない。なぜ福岡では呼び方が異なるのか。1種の方言だと考えられるが、「放生(夜)」
まずは筥崎宮の境内へ
放生会に来たら、参道に建ち並ぶ露店を横目に、まずは筥崎宮の境内へ。筥崎宮は、「筥崎八幡宮」とも呼ばれ、京都の「石清水八幡宮」、
鎌倉中期「蒙古襲来」の際、俗にいう “神風” が吹き、未曾有の困難に打ち勝ったことから、厄除・勝運の神としても知られる筥崎宮。足利尊氏、豊臣秀吉など、名だたる武将も参詣したという。毎年、ホークスやアビスパの選手が必勝祈願に訪れることでも有名だ。
放生会の期間中、境内のステージでは、「神賑い」というステージイベントも開催されている。
パワースポット「湧出石」
筥崎宮の境内にあるパワースポットのひとつ「湧出石(わきでいし)」。この石に触れると、運が湧き出るといわれている。
地面からわずかに顔を出す湧出石は、「国に一大事があるとき、地上に姿を現す」という古い言い伝えがあるそうだ。
「おはじき」は通年販売に
筥崎宮の放生会と言えば、「放生会おはじき」を思い浮かべる人も多いだろう。博多人形師らが作る「放生会おはじき」は、毎年テーマを変えて制作され、放生会の初日に数量限定で販売されていた。
悪災を “はじく” 縁起物として親しまれてきたが、購入希望者が徹夜で列を作るほど人気が過熱。ネットオークションでは高額で取り引きされることもあり、惜しまれつつも2017年に販売が中止された。しかし、2018年、「筥崎宮おはじき」として復活。現在は放生会の時期だけでなく、通年で販売されている。
放生会期間中、本殿の廻廊では、過去の「放生会おはじき」が展示されている。普段は入ることができないエリアなので、ぜひこの機会に見学してみよう。
ガラス細工「チャンポン」
放生会では、「チャンポン」も人気だ。チャンポンと言っても、食べもののことではない。一般的には「ビードロ」、あるいは「ぽぴん」とも呼ばれるガラス製の玩具。息を吹き込むと、“チャン” “ポン” と涼しげな音を奏でる。かわいらしいデザインは、筥崎宮の巫女さんたちが手作業で絵付けしたものだ。
チャンポンも、放生会おはじきと一緒に、回廊で展示されている。
筥崎宮おはじきとチャンポンは、境内の社務所(札所)で購入できる。また、空くじ無しの「鳩みくじ」もこちらで購入可能。豪華な賞品も準備されているので、運試しにチャレンジしてみては?
どこまでも続く屋台
さぁ、お待ちかね。500軒もの露店が並ぶ参道へ。放生会は昼でも夜でも楽しめるが、どちらかと言うと夜のほうが涼しくて歩きやすく、風情もあっておすすめだ。
参道は、福岡ではなかなか経験することのない人混み。平日でも夜にはたくさんの人が訪れ、週末はスムーズに歩くのが難しいほど。それでも、屋台の数がそれに負けていないため、何かを買うために行列ができるというようなことは少ない。ただし、子供の迷子には要注意。
参道を歩いていると、焼きイカなどの香ばしい匂いが食欲をそそる。屋台の種類は、驚くほど豊富だ。焼き鳥や焼きそばなどの定番はもちろん、他県のB級グルメや海外の料理も。りんご飴や綿あめも、子供たちに大人気。
価格帯はお店によってバラバラ。“お祭り価格” のお店も多いが、よく探せば1本100円の焼き鳥なども。大きなテントの中にテーブルが並んだエリアもあるので、ゆっくり座って食べたい場合はそこを利用しよう。(下記MAPを参照)
楽しみは食べ物だけではない。射的やヨーヨー釣りのほか、ダーツやアーチェリーなど、大人も子供も楽しめるアトラクションがたくさん。魅惑的な賞品が並んだクジ引きもそそられる。アレもしたいコレもしたいと駄々をこねた幼少期。「3個まで」が我が家のルールだった。
初めて放生会に行くと、似たような景色が続くため、その全体像がわかりにくい場合がある。露店は上記MAPの青ラインのように並んでいるので、これを頭に入れておくと迷いにくいだろう。
お化け屋敷
放生会には幼少期から毎年のように行っている筆者だが、実はお化け屋敷には一度も入ったことがない。子供のころ、「ほらほらほら、さぁ入った、入った…」という独特なマイクの呼び声が怖くて、ここだけは足早に通り過ぎていた。勇気のある人は、ぜひチャレンジしてみてほしい。
放生会は浴衣でもいいの?
放生会は、浴衣で楽しむ人の姿も少なくない。福岡では放生会で浴衣を着納めるという人も多いので、特に季節外れな感じは出ないだろう。
なぜ新生姜が名物なの?
放生会の風物詩のひとつ、葉っぱがついた新生姜(しんしょうが)。昔から、なぜ新生姜なのだろうかと疑問に思っていた。
諸説あるようだが、筥崎宮の話では、「一説によると黒田官兵衛とその恩人である加藤重徳という武将が関係しており、二人が久しぶりに再会したのが放生会で、そのとき重徳がせめてもの手土産に渡した物が、土がついたままの新生姜だった」そうだ。また、昔この辺りには生姜畑が広がっていて、放生会のときに季節物の新生姜を販売していたという話も。
新生姜は刻んで薬味にしてもいいし、甘酢漬けで「ガリ」にしても美味しい。葉っぱの部分は、消臭作用があるので冷蔵庫に入れたり、お風呂に入れるという人も。
放生会は何時まで?
放生会の開始時間と終了時間は、明確には公表されていない。
楼門の開門がおおよそ7時半頃で、露店の開店は店にもよるが、10時頃より徐々に開店していく。夜もはっきりとは決まっておらず、おおよそ23時頃に閉門し、露店も23時頃を目安に徐々に閉店していく。
2018年の放生会
毎年放生会に行っていると、なんとなくその年の “流行り” がわかるようになる。
ちなみに、2018年最も流行りそうなのが光る風船だ。子供も喜ぶだろうが、インスタ映えにも一役買いそうだ。
食べ物では、最近韓国で人気という「チーズハットグ」が注目を集めていた。アメリカンドッグのような食べ物で、ソーセージの代わりに伸びるチーズが入っている。
アクセスと駐車場
放生会の期間中は、国道3号線沿いに特別駐車場が用意されている。ただし、通行止めのエリアもあり、周辺は毎年かなり混み合う。地下鉄なら「箱崎宮前駅」からすぐに参道に出られるほか、JRも「箱崎駅」から徒歩8分、「吉塚駅」から徒歩12分だ。
◆筥崎宮放生会
開催期間:2018年9月12日~9月18日
※2018年は、1年おきに実施される御神幸(御神輿行列)は無し。
[文・写真]山下侑一郎
撮影日:2018年9月12日