ご飯がもられた丼ぶりを片手に、市場の中をねり歩く。一見奇妙だが、北九州にある「旦過市場(たんがいちば)」では見慣れた光景だ。北九州市民の台所としてだけでなく、国内外の観光客にも人気の旦過市場。食べ歩きをするなら絶対に外せない、おすすめのグルメを紹介したい。
昭和レトロな雰囲気
大正時代に始まり、100年以上の歴史を持つ「旦過市場」。よく見ると水上に建てられており、外観からは、その歴史の古さを感じる。ともすると、入るのを躊躇しかねない外観だが、市場の中は想像以上に活気であふれている。
「市場」と言っても生活市場もかねているため、日常の買い物をする市民や観光客の姿も多く、“賑やかな商店街” といった雰囲気。
鮮魚を中心に、野菜や果物など、新鮮でお買い得な食材がずらりと並ぶ。その他、お惣菜や飲食店もあり、100軒以上の店舗が軒を連ねる。
丼ぶり片手に
オリジナルの海鮮丼を
ここ数年、旦過市場の中でも特に注目を集めているのが「大學堂」だ。旦過市場商業協同組合と北九州市立大学の商学連携事業としてスタートし、大学の学生たちが運営している。
こちらの名物は1杯200円の「大學丼」。ご飯だけがもられた丼ぶりを受け取り、のせる具材は旦過市場の中で自由に購入するという斬新なスタイル。
先に食材を購入してから大學堂に行ってもいいし、丼ぶりを持ち歩いて各店舗で具材をのせてもらい、大學堂に戻ってから食べてもいい。ただし、丼ぶりを持ち歩く場合は、ご飯が冷めてしまわないよう、先にお店の目星をつけておくといいだろう。
今回、丼ぶりにのせる具材を購入したのは、大學堂の近くにある「浜田水産」。種類豊富な海鮮が並び、おすすめの魚なども詳しく教えてくれた。
散々迷った末にチョイスしたのは、本まぐろトロ、関門タコ、天然甘鯛、イクラの4品。合計2,400円で、たっぷり二人前。一杯あたり1,200円で、贅沢なオリジナル4色丼の完成だ。もちろん魚はどれも新鮮。人数が多いほど、いろんな食材をのせることができるので、大人数で行ったほうが楽しめるだろう。
小倉の郷土料理「ぬか炊き」
旦過市場に行くなら、「ぬか炊き(ぬかみそ炊き)」も買わずにはいられない。サバやイワシなどの青魚をぬか床(ぬか味噌)で炊き込んだ小倉の郷土料理だ。旦過市場には、ぬか炊きを売っているお店がいくつかある。
今回は「ぬかだき たちばな」で、サバのぬかみそ炊きを購入。思い出しただけでヨダレが出てくる。味がしっかりしみ込んでいて、骨まで柔らかく、これひと切れで、ご飯3杯くらい食べられそうな美味しさ。大學丼を “ぬか炊き丼” にするという手もありだ。
旦過市場名物「カナッペ」
海鮮丼とぬか炊きで、すでにお腹いっぱいかもしれないが、「小倉かまぼこ」のカナッペも忘れてはならない。
旦過市場の「カナッペ」は、いわゆる誰もが想像する「カナッペ」とは、ひと味もふた味も異なる。魚のすり身に玉ねぎ、にんじん、胡椒を混ぜ込み、薄い食パンで巻いて揚げている。見た目からは味の想像が難しいが、一口食べた瞬間、クセになる美味しさだ。
外側はカリッとしていて、中はプリッと柔らか。ピリッとした胡椒の辛みがいいアクセントになっている。食べ歩きにもいいが、お酒のつまみとしても良さそうだ。
果物屋さんで〆パフェ
いつだって、甘いものは別腹。〆のデザートは、「あずきパフェ」。
旦過市場通りの端にある「もりしたフルーツ」では、店先でフルーツジュースや、スムージー、パフェ、ソフトクリームをいただくことができる。果物屋さんでありながら、市場を歩き疲れたときの甘味処としても重宝する。
お土産に「こぶたのプリン」
お土産を買うなら、「藍昊堂菓子舗(アオゾラドウカシホ)」へ。
チーズ饅頭やスコーンなど、魅力的な商品が並ぶ中で、ひときわ目につくのが「こぶたのプリン」。瓶の上にのった、可愛らしい白ブタさんの中身は、鹿児島県産のミルキーな純・生クリームだ。
驚くほどトロンとした、なめらかな口当たり。プリンのやさしい味を、濃厚な生クリームがさらに引き立てる。プリン好きはもちろん、プリンのカラメルが苦手という人にもおすすめの新感覚プリンだ。
アクセスと駐車場
旦過市場は、北九州モノレールの「旦過駅」から徒歩すぐ。車で行く場合は、提携駐車場がないため、近隣の有料駐車場に停める必要がある。おそらく、一番近くて便利なのは「旦過パーキング」というコインパーキングだろう。
“再整備” の話も進んでいる旦過市場。どのように生まれ変わるのか楽しみだが、この古き良き昭和レトロな雰囲気は、ぜひ残してほしい。
[文・写真]山下侑一郎