山口県の人気観光地「秋芳洞(読み方:あきよしどう)」。総延長が10kmを超える、日本最大規模の大鍾乳洞だ。長い年月をかけて生み出された自然の造形美は、まさに神秘そのもの。約1kmの観光コースに散りばめられた見どころの数々を、たっぷりと紹介したい。
もくじ
そもそも鍾乳洞とは?
秋芳洞の地上に広がるのは、日本最大のカルスト台地「秋吉台」。カルスト台地は、雨水や地下水に溶けやすい「石灰岩」でできている。その石灰岩が地下水などにより、少しずつ溶かされ、崩落を繰り返すことで、地下に大きな空間(洞窟)が生まれれる。それが「鍾乳洞(しょうにゅうどう)」だ。
秋芳洞の特徴
国の特別天然記念物にも指定されている、国内屈指の大鍾乳洞「秋芳洞」。約1kmの観光コースがあり、所要時間はゆっくり往復して約90分。洞内の温度は、一年中17℃と一定のため、夏は涼しく、冬は温かい。
足元は舗装されているが、滑りやすいのでスニーカーがおすすめ。水たまりになっている部分もあるが、気をつけて歩けば、靴が激しく汚れるほどではないだろう。
ちなみに、福岡で鍾乳洞といえば「千仏鍾乳洞」が有名だが、それをイメージして秋芳洞に行くと、そのスケールの違いに驚かされる。千仏鍾乳洞のような「水の中を歩く」楽しみはないが、規模や迫力では、秋芳洞の方が一枚も二枚も上手だ。
秋芳洞の見どころ
それでは早速、秋芳洞の見どころをひとつずつ紹介していこう。秋芳洞には3つの入口があるのだが、以下は「秋芳洞正面入口」から入った場合の順番に並べてある。
洞正面入口
いきなり登場する、絶好のフォトスポット。高さ20m、幅8mの岩の裂け目が秋芳洞の入口だ。中からあふれ出てくる、透き通った地下水に、洞内の暗闇へと続く橋。すでに、ワクワクが止まらない。
鍾乳洞の中に入ると、そこは完全に異空間。さぁ、非日常の世界を堪能しよう。
冒険コース
正面入口を入ってすぐに登場するのが、希望者のみ体験できる「冒険コース」だ。入洞料とは別に300円を料金箱に入れ、貸出用の懐中電灯を手に持って進む。所要時間は15分ほどで、岩肌のはしごを登ったり、穴をくぐり抜けたりと、本格的な探検気分が味わえる。
長淵(ながぶち)
「長淵」は、その名の通り、幅6mほどの長い淵になっており、岩肌には、かつての水位や浸食の跡が見て取れる。
百枚皿(ひゃくまいざら)
秋芳洞で一番の見どころとも言える「百枚皿」。まるで棚田のような見た目だが、「石灰華段丘(せっかいかだんきゅう)」と呼ばれるカルスト地形の一種で、石灰分が皿状に沈殿してできたものだ。
「百枚皿」という名前なので、その数は100枚くらいなのかと思ったら、実際には500枚以上あるという。
洞内富士(どうないふじ)
富士山のような形をした「洞内富士」。天井からのしずくに含まれる石灰分が長い年月をかけて沈積し、5mほどの大きな山を形成している。
縮緬岩(ちりめんいわ)
檻で保護された「縮緬岩」。よく見ると、岩の表面に、絹織物の「ちりめん」のような細かいシワが見える。ただそれよりも、キラキラと光る粒子が神秘的で美しい。
千町田(ちまちだ)
百枚岩と同じ石灰華段丘の「千町田」。この水の中には、「ヨコエビ」という目が退化した小さな生き物がいるそうだ。(残念ながら見つけられず)
傘づくし
つららのように、天井から無数の鍾乳石(しょうにゅうせき)がぶら下がる「傘づくし」。昔の傘屋の天井を思わせる。
大黒柱(だいこくばしら)
天井から伸びる鍾乳石と、地面から積み上がる石筍(せきじゅん)がつながった「大黒柱」。
空滝(からたき)
水が流れ落ちる滝のように見える「空滝」。
岩屋観音(いわやかんのん)
壁面に空いた空洞の奥に観音様が祀られているかのようだ。
黄金柱(こがねばしら)
高さ15m、幅4mの石灰華柱「黄金柱」。何万年もの時をかけて形成された、その圧倒的な造形は、息を呑むほどの迫力だ。
巌窟王(がんくつおう)
美術館に飾られた芸術作品のような「巌窟王」。勇ましいパワーを感じる。
クラゲの滝のぼり
その名の通り、無数のクラゲが滝を登っているかのように見える。
龍の抜穴
どれもそうなのだが、造形の美しさだけでなく、そのネーミングセンスにも感心する。「龍の抜穴」、まさに。
マリア観音
こちらも、言われてみれば、確かに幼子を抱いたマリア像のように見える。
3億年のタイムトンネル
最後の見どころ「3億年のタイムトンネル」。地球誕生から現代までの秋吉台をイメージした絵が、両側の壁に飾られている。長い年月をかけて形成された秋芳洞の歴史とも重なり、その時の長さに、地球の偉大さと秋芳洞の神秘を感じる。
このトンネルの先は、反対側の入口「秋芳洞黒谷入口」なので、こちらでUターン。あとは、来た道を戻るだけだ。道が細いところもあるので、必ず「左側通行」を厳守しよう。
秋芳洞の入洞料金
秋芳洞の入洞料金は、小学生 600円、中学生 950円、高校生以上 1,200円。団体割引については、公式サイトをチェック。
秋芳洞へのアクセス・駐車場
秋芳洞は、福岡市内中心部から車で約2時間。中国自動車道の美祢ICを降りたら、残りは15分ほど。
秋芳洞の正面入口は、商店街を抜けた先にある。少し分かりづらいが、案内看板に従って歩けば大丈夫だ。
秋芳洞の入口は、「正面入口」「黒谷入口」「エレベーター入口」の3箇所があり、それぞれの入口付近に駐車場がある。その中でも一番駐車可能台数が多いのは、正面入口付近だ。2箇所ある市営の大型駐車場は1日400円。そのすぐ近くに1日100円の駐車場もあるが、台数はかなり限られる。
秋吉台国定公園へ
秋芳洞を堪能したら、少し移動して、秋吉台のカルスト台地も見ておこう。
カルスト展望台
秋芳洞から「カルスト展望台」までは、車で5分ほど。ちなみに、秋芳洞のエレベーター入口からも、徒歩5分ほどで行くことができる。観覧券(入洞券)を提示すれば、無料で再入洞可能だ。
展望台からは、日本最大規模のカルスト台地を一望。夏には、白い石灰岩と濃い緑の草原の美しいコントラストを眺めることができる。(上の写真は3月末に撮影)
Mine秋吉台ジオパークセンター Karstar
展望台の横には、「Mine秋吉台ジオパークセンター Karstar(カルスター)」という観光案内施設があり、こちらのカフェスペースでは、秋吉台の絶景を眺めながらゆっくりとくつろぐことができる。
長者ヶ森
がっつりとトレッキングするほどではないが、草原の中を少し歩いてみたいなぁ、という人には「長者ヶ森(ちょうじゃがもり)」がおすすめ。車で長者ヶ森駐車場に移動すると、そこから徒歩10分ほどの距離に、うっそうと茂った原生林がある。どこかトトロの森のようだ。
森の中は神秘的な雰囲気で、気軽に行ける、ちょっとしたパワースポットになっている。
TEXT・PHOTO:山下侑一郎