糟屋郡篠栗町にある「南蔵院」。ブロンズ製では世界一の大きさを誇る釈迦涅槃像が、圧倒的な存在感で横たわる。ご住職が1億3千万円の宝くじを当てたことでも有名だが、それだけではない。実際に足を運んでみると、多種多様な仏像が祀られており、福岡県内でも有数のパワースポットになっている。釈迦涅槃像はもちろん、その他の見どころも詳しく紹介したい。
もくじ
南蔵院とは
福岡市内中心部から車で30分ほどの距離にある糟屋郡篠栗町の「南蔵院(なんぞういん)」。篠栗では、弘法大師(空海)の足跡をたどり八十八箇所の霊場(札所)を巡拝する「お遍路」も人気だ。南蔵院は、その八十八箇所ある「篠栗四国霊場」の総本寺であり、第一番札所となっている。また、「高野山真言宗」の別格本山でもある。
無料駐車場は3箇所
南蔵院には、無料の駐車場が3箇所用意されている。最も近い位置にある駐車場は10台ほどしか停められないので、休日だとここに駐車するのは難しい。城戸南蔵院前駅近くの無料駐車場に停める場合は、本堂の周りから見て回り、第二駐車場に停めるなら、歩道橋を渡って釈迦涅槃像(しゃかねはんぞう)から見て回るのがいいだろう。
城戸南蔵院前駅の周辺にはお店が何軒かあり、その近くにある「メロディ橋」も見ておきたいスポットのひとつ(詳しくは後述)。そのため、第二駐車場よりも、城戸南蔵院前駅近くの無料駐車場に停めるのがオススメだ。
ただし、その際に注意点がひとつ!
城戸南蔵院前駅近くにある南蔵院参拝者専用の無料駐車場は、少し奥まったところにある。そして、そこに行き着くまでに、4つほど有料の駐車場があるため、無料駐車場の存在を知らなければ、有料駐車場のスタッフにそのまま誘導されかねない。無料駐車場には誘導スタッフがいないので、無料で駐車したい場合は、予め上記のことをしっかり頭に入れておこう。
曲を奏でる「メロディ橋」
JR城戸南蔵院前駅から南蔵院に向かう途中に架かる「メロディ橋」。
橋に備えつけられているマレット(バチ)で順番に叩くと、きれいな音が響き、ひとつの曲を奏でる。曲は右側と左側でそれぞれ異なるが、どちらも有名な童謡だ。ぜひ実際にマレットで叩いてみて、何の曲か当ててみてほしい。
多種多様な仏像が点在
メロディ橋から国道を渡り、南蔵院の中へ。参道には美しいモミジの木が生い茂る。紅葉の時期にはまた一段と風情があるだろう。
南蔵院はご住職が1億3千万円の宝くじを当てたことでも有名なため、金運アップを願う参拝者も少なくない。そのため、参道沿いにある土産店でも、金運グッズがずらりと並ぶ。
お寺の中には、いたるところに多種多様な仏像が祀られていて、見どころが多い。少し歩いては立ち止まり、手を合わせる。
「水子地蔵」の近くにある小さな池の亀たち。全て置物かと見間違うほどじっとしているが、よく見ると必死に上へ登ろうとしている亀も。「鶴は千年、亀は万年」といわれるように、亀は長寿の縁起物。こちらもご利益がありそうだ。
良縁・円満の地蔵様
こちらは「恋愛成就」「家庭円満」「職場円満」など、良縁・円満の地蔵様。
その横には、絵馬をかける洞窟のようなスペースが。「良縁祈願絵馬(500円)」は本堂で購入できる。
泣く子も黙る「大聖不動明王」
参道を登ると、「大聖不動明王」にたどり着く。その高さは11m。泣く子も黙る迫力だ。不動明王はさまざまな厄災から人々を助けてくれる仏様。背中の炎で煩悩を焼き尽くし、右手の剣で「むさぼり、怒り、愚かな考え」を改めさせ、左手の縄で悪をしぼりとるそうだ。
よく見ると、右目は上、左目は下を向いている。天から地に至るまで、いっさいの悪や煩悩を見逃さない、そんな気迫を感じる。
ここでは、「お百度参り」もできるようになっている。一心に祈ればどんな願いごとも叶うという。ここぞというときに試してみたい。
不動明王の横には、喜怒哀楽の表情をした「五百羅漢(ごひゃくらかん)」の像がある。こちらも大聖不動明王に負けず劣らずの迫力。ひとつひとつよく見て回ると、自分や知人にそっくりな羅漢に出会えるかもしれない。
雷が落ちた杉の木
大聖不動明王の前にそびえ立つ杉の木は、以前雷が落ちたそうで、幹の皮が剥がれてしまっている。
しかし、被雷した木には神が宿るといわれているため、この木に雷神様を彫刻。災いを除く神様として崇拝されている。
平家が身を潜めた岩
大聖不動明王の脇の階段をさらに上がると「不動の滝」がある。篠栗四国霊場の発願の地だという。
滝の前の橋を渡ったところにある巨岩は、「平家岩(へいけいわ)」と呼ばれており、壇ノ浦の戦い敗れた平家の落人がここに身を潜めていたという伝説が残っているそうだ。
それにしても、まだ釈迦涅槃像にたどり着いていないというのに、すでに見どころが多い。
「七福神トンネル」で商売繁盛
さぁ、そろそろ釈迦涅槃像に向かおう。釈迦涅槃像に行くには、本堂の横にある「七福神トンネル」を通る。
トンネルの中央部分には、「七福神」が祀られている。「七福神」は事業の成功や商売繁盛などを叶えてくれる神様。これは拝んでおかなければ。
宝くじ当選祈願は「大黒堂」で
七福神トンネルを抜けたところにあるのが「大黒堂」と「妙見堂」。南蔵院のご住職が、宝くじを大黒天様のお札で巻いておいたら見事に高額当選したということで、この「大黒堂」でお札を買っていく人が多いという。
ここには、ロトやナンバーズの記入台があり、番号が書かれたカラフルなくじ棒も用意されている。ここで出た数字を選んでみるのもよさそうだ。ちなみに、ここで宝くじを購入することはできないので、記入した用紙を各宝くじ売り場まで持って行こう。
釈迦涅槃像は想像を超える大きさ
大黒堂からさらに奥に進むと…。んっ! 何か見えた!!
ついに! 釈迦涅槃像が姿を現す。
で、でかい…!!
全長41m、高さ11m、重さ約300t。ブロンズ像では世界一の大きさを誇る釈迦涅槃像。手前にいる人間と比べれば、その大きさは一目瞭然だ。
南蔵院は長年、ミャンマーやネパールなどの子供たちに医薬品や文房具などを贈り続けていた。1988年、その返礼としてミャンマー国仏教会議からお釈迦様、阿難様、目連様の仏舎利(遺骨)を貰い受けたという。この仏舎利を安置する場所として、この巨大な釈迦涅槃像が建立されたのだ。
安らぎの境地
日本国語大辞典によれば、『涅槃(ねはん)』とは、
まさに、そんな表情をしている。
よく見ると、お釈迦様の左手から五色の布が垂れ下がっている。これは、お釈迦様が悟りを開いたときに「五色の光」が現れたことに由来しているとか。
この布は、お参りする場所まで伸びているので、参拝者もお釈迦様の左手とつながったこの布を握ることができる。
足の裏にも深い意味が
正面からお参りしたら、今度はお釈迦様の足元へ回ってみよう。インド初期仏教では、仏像を作ることを恐れ多いとし、お釈迦様の足の裏の相を石に刻み、「仏足(ぶっそく)」として礼拝の対象にしたという。
それにしても大きな足だ。子供は親指ほどの大きさしかない。
涅槃像の体内へ
釈迦涅槃像は、実はその体内に入ることができる。体内にはお釈迦様の遺骨を安置した仏舎利の間があり、この「体内参拝」は有料となる。(南蔵院自体の参拝は無料)
受付で500円を支払い、「護摩木(ごまぎ)」という木の札に祈願したいことを書き込む。子供であれば、七夕の短冊のように願いごとを書いていいそうだ。
体内は撮影禁止。護摩木は仏舎利の間で参拝するときに納める。また、体内では「四国八十八箇所のお砂踏み」ができる。お砂踏みとは、四国八十八箇所霊場の「お砂」をそれぞれ集め、それを踏みながらお参りすること。そのご利益は、実際に遍路をしたことと同じであるともいわれているので、南蔵院に参拝する際はぜひ体内まで入ってみてほしい。
体内から出てくると、「俵投げおみくじ」にチャレンジできる。俵投げといっても、投げるのは羽子板の羽のようなもの。チャンスは3投。ひとつでも赤い升に入れば景品がもらえる。
残念ながら1投も入らなかったため、景品が何だったかはわからず…。
疲れたらひと休み
涅槃像の正面には、休憩スペースと売店がある。
たくさん歩いたので、宮崎マンゴーのソフトクリームを食べながらひと休み。これぞ、ある意味 “安らぎの境地”。
所要時間は1時間半〜2時間
想像していたよりもはるかに見どころが多かった南蔵院。これでもまだ、紹介しきれなかった場所も多い。参拝の所要時間は、およそ1時間半〜2時間。隅々まで網羅しようと思えば、もっとかかるだろう。
涅槃像だけでなく、さまざまなご利益を享受することができる南蔵院は、福岡でも屈指のパワースポットだ。ただし、南蔵院はあくまで “祈りの場”。境内では騒がず、敬意を払ってお参りしよう。
ちなみに、参拝スポットが多いので、お賽銭用のお金は多めに準備しておくといいだろう。
[文・写真]山下侑一郎
※現在、日本人以外の団体参拝はお断りしているそうなのでご注意ください。