黒川には、黒川にしかない魅力がある。高速道路や駅から離れた場所にありながら、全国でも屈指の人気を誇る温泉地「黒川温泉」。街中から漂う風情は、湯布院や別府ともまた違った趣きを感じる。湯めぐりはもちろん、絶品スイーツや感動的な絶景など、黒川温泉に行くなら必ず訪れたいおすすめスポットとモデルコースをご紹介します。
もくじ
小国郷・黒川温泉について
黒川温泉は、熊本県阿蘇山の北に位置する山里の温泉街。黒川温泉がある「南小国町」とその隣の「小国町」を併せて「阿蘇小国郷エリア」とも呼ばれ、わいた温泉郷や杖立温泉などもこのエリアに含まれる。(今回は、黒川温泉を中心に、小国町も含めた阿蘇小国郷エリアのスポットを紹介)
山あいの小さな集落に、個性豊かな温泉宿が軒を連ねる。温泉街を散策すると、そこらじゅうに風情が漂い、初夏には新緑、秋には紅葉と、四季折々の美しい表情を見せてくれる。疲れた体や心を癒やしたい、ゆったりとした時間を過ごしたい、そんな時には真っ先に候補にあがる観光地だ。
まずは「風の舎」で入湯手形を入手
黒川温泉の観光は「風の舎」から始まる。黒川温泉観光旅館協同組合が運営する観光案内所で、目の前は無料の駐車場になっている。ここに車を止めて、温泉街を散策しよう。
黒川温泉を観光するなら、まずは「入湯手形」を入手。風の舎や各旅館で購入でき、この入湯手形1枚で、3ヶ所の露天風呂に入浴できる。
<入湯手形>
・1枚 1,300円(こどもは700円)
・1枚で3ヶ所まで
・有効期限は半年
・1名につき1枚必要
こども入湯手形は、おもちゃやお菓子が当たるくじ引きのご褒美付き。3軒入浴後、風の舎に手形を持って行こう。
風の舎のすぐ下にある「べっちん館」では、浴衣のレンタルが可能。旅館に宿泊しない日帰りの観光客でも、浴衣を来て温泉街を散策することができる。
風情あふれる温泉街を散策
入湯手形をゲットしたら、早速温泉街を散策してみよう。風の舎から「べっちん坂」という急な坂を下りると「丸鈴橋」にたどり着く。黒川温泉の代表的な撮影スポットだ。橋の下に流れるのは筑後川の源流で、福岡県を通り有明海へとつながっている。
細く趣きのある坂道も黒川温泉らしい風景のひとつ。勾配は少し急だが、どの坂も長くはないので、散策を楽しむのにはちょうどいい。
温泉街の中心部にある「地蔵堂」。黒川温泉の発祥とされる逸話「身代わり地蔵」のお地蔵様が祀られている。ここでは、使用済みの入湯手形に、「恋愛成就」「家内安全」「学業成就」いずれかのスタンプを押して奉納することができる。
温泉街のメイン通りである「川端通り」を中心に、温泉旅館やお食事処、お土産屋さん、スイーツショップなどが並んでいる。入湯手形で特典が受けられるお店も多いので要チェックだ。
軒下に吊るされたとうもろこし。
美しい緑の苔。どこを切り取っても風情があふれる。
柔らかくてジューシーな “あか牛” ランチ
ランチは、熊本の大自然で育った “あか牛” をいただく。お宿 玄河のお食事処「うふふ」にて、『玄河のあか牛丼セット(1,620円)』。ご飯が全く見えないほど敷き詰められたあか牛は、ジューシーで旨み豊か。それでいて、脂肪分が少なくヘルシー。添えられたあか牛肉味噌は、コクがありお肉との相性が抜群だ。旅先だからこその、ちょっと贅沢なランチ。
絶品スイーツ&食べ歩きおやつ
美味しいスイーツも黒川温泉の楽しみのひとつ。基本的に甘いものは別腹だが、いつもより少し多めに別腹を残しておきたい。
白玉っ子 甘味茶屋
まず最初におすすめしたいのが、「白玉っ子 甘味茶屋」の『白玉ぜんざい(810円)』。この日は暑かったので「冷やしぜんざい」をチョイス。噛むと弾むような白玉のモチモチ感に、ちょうどいい甘さのぜんざい。和の王道的なスイーツは、黒川温泉の雰囲気にもぴったりだ。
Patisserie 麓
続いては、黒川温泉の人気店「Patisserie 麓」の『塩こうじシュークリーム(250円)』。小国ジャージーミルク入りのカスタードクリームが、サクサクの生地の中から溢れんばかり。濃厚で食べごたえあり。
黒川温泉どら焼き家 どらどら
アイスクリームをどら焼きでサンド! 「黒川温泉どら焼き家 どらどら」の『どらどらアイス(300円)』は食べ歩きにもぴったり。アイスは、「チーズ」や「焼プリン」など変わり種の味もあったが、ここは小国ジャージーの濃厚バニラをチョイス。バニラと小豆の相性の良さは言わずもがなだろう。
おすすめの露天風呂
さぁ、いよいよ入湯手形の出番だ。風の舎で入手できる観光MAPには、当日の営業時間や休館の情報が書かれているのでチェックしておこう。(黒川温泉観光旅館協同組合のHPでも確認可能)
黒川温泉の露天風呂は、絶景あり、洞窟あり、混浴あり、と個性豊かな温泉が多くそろっている。それらの中から、どうやって3ヶ所を選べばいいのか。難しいところだ。そこで、参考までにおすすめの露天風呂をいくつか紹介しておきたい。
山みず木
温泉街から車で5分ほどの奥黒川エリアで、渓流沿いの静かな山あいに佇む宿「山みず木」。黒川温泉に来たらここは外せない。温泉街から乗車できる「湯めぐり無料巡回バス」もあり。
自然の中に溶け込む、広々とした露天風呂。手が届きそうな距離に川が流れ、目の前には大きなもみじが青々と茂る。川のせせらぎ、木々のざわめきに耳を傾け、ゆったりと温泉に浸かれば、自然と一体化したかのようだ。
露天風呂と併せて入ることができる内湯には、目の前に大きな窓があり、計算された美しいもみじの借景を堪能できる。立派な古民家風の建物で、タイミングよく貸し切り状態になると、お殿様にでもなったかのような贅沢な気分を味わえる。
三愛高原ホテル
見晴らしを求めるなら、「三愛高原ホテル」に勝るところはない。温泉街から車で10分ほど、標高920mの高原に位置する。
見よ、この大パノラマ! 阿蘇の雄大な大草原を一望できる、この上ない開放感。ジャグジーが付いた寝湯に横たわると、ちょうど目の高さに高原の稜線が広がる。これほどまでに見晴らしのよい露天風呂が他にあるだろうか。夜は照明を少なくしているそうで、天然のプラネタリウム状態だ。
山の宿 新明館
黒川温泉の中でもひときわ個性が光る「山の宿 新明館」。温泉街の中心部にあるのでアクセス抜群。田の原川に面した建物の外観から、すでに幻想的な雰囲気が漂う。
新明館の名物は、ここの主人が数年かけて手掘りしたという洞窟風呂だ。「女性専用の洞窟風呂」と「混浴の穴風呂」に分かれているが、どちらも洞窟風呂なので、後者は実質的に「男性用の洞窟風呂」になっている。
洞窟の中に入ると、簡易的な脱衣スペースがあるのでそこで洋服を脱ぎ、さらに奥へと足を進める。その名の通り、洞窟の中に温泉があり、湯船の中を進んで行くと、ぐるっと1周つながっている。 “癒やし” よりも “ドキドキ感” が上回る、まさに秘湯。入湯手形でせっかく3ヶ所周れるなら、似た感じの温泉ばかり選ぶより、こういった個性的な温泉も入れておきたい。
旅館 こうの湯
最後におすすめしたいのは、温泉街から車で3分ほどの距離にある「こうの湯」。
高台にあり、雑木林に囲まれた広い露天風呂は、源泉かけ流し。そのお湯は、時間によってこくこくと色が変化する。
さらにユニークなのは、男女ともにある「立ち湯」だ。立った状態で入る温泉。深さは、女湯が最大130cm、男湯が最大160cmで、日本一深い立ち湯だそうだ。丸太に捕まりながら1番深い先端まで進むと、高台からの絶景を見下ろすことができる。この不思議な浮遊感と開放感は、ここでしか味わえない。
全てが一流! 宿泊は「山みず木」
今回筆者が宿泊したのは、おすすめの露天風呂でも登場した「山みず木」。温泉、料理、接客、その全てが一流で、満足度は極めて高い。次に黒川温泉に来るときも、またここに泊まりたい。心からそう思える宿だ。
駐車場に着いた瞬間から、チェックインを終え部屋に入るまで、終始心地のよいおもてなしを受ける。客室は、木と畳のぬくもりを感じる落ち着いた空間。
縁側では、コーヒーを飲みながら、すぐ下を流れる清流を見下ろせる。
温泉や接客だけでなく、夕食も期待通り。いや、期待以上の絶品だ。
熊本の郷土料理を中心としたコースで、野菜、お魚、お肉、どれもうっとりする美味しさ。量も多すぎないので、食後はちょうどいい満腹感と幸福感に満たされる。
山みず木の温泉は前述した通り、圧倒的な風情と癒やしを堪能できる。立ち寄り湯なら一度きりだが、ここに宿泊すれば朝も夜も入り放題。早朝の露天風呂は、心まで清らかになれる。
さらに、「山みず木」と「新明館」は姉妹館で、山みず木の宿泊者は、新明館の立ち寄り湯を無料で利用可能。つまり、山みず木に宿泊し、入湯手形を購入すれば、山みず木+新明館+3ヶ所で、計5ヶ所の露天風呂をめぐることができるのだ。
平野台高原展望所(恋人たちの丘)
黒川温泉の絶景スポット「平野台高原展望所」。別名 “恋人たちの丘” とも呼ばれ、展望台の鐘を鳴らしたカップルは幸せになれるとか。見渡す限り、青い空と緑の木々。その美しいコントラストの間に阿蘇五岳がうっすらと見える。少し下に駐車場があるが、ここまで車で登ってくることも可能。
そば街道 吾亦紅
水のきれいなところには、美味しい蕎麦がある。それは、黒川温泉がある南小国町も例外ではない。「そば街道」と呼ばれる山道をはじめ、あちこちにそば処が点在している。今回いただいたのは、そば街道の人気店「吾亦紅(われもこう)」の『あか牛南蛮そば(1,650円)』。
そばは喉ごしがよく、あか牛の旨みが染み込んだつゆも美味。あか牛は、やわらかいランプ肉を使用。希少な部位のため、毎日数量限定での提供となる。
道の駅 小国ゆうステーション
そば街道から車で10分ほどの距離にある「道の駅 小国ゆうステーション」。一見それらしくない、全面ミラーガラス張りのユニークな外観だが、中に入ると1階が休憩所を兼ねた特産品販売所、2階が小国町の情報発信を行うギャラリーになっていた。黒川温泉のお土産はここでも購入可能だ。
筆者が購入したお土産は、この3つ。食べだしたら止まらなくなる「おぐにジャージー牛乳かりんとう」、トーストにつけたら絶品の濃厚でコクのあるミルクジャム「スイートジャージー」、ひと口試食して即購入を決定した「豆乳羊羹」。食べてばっかりの旅は、お土産もやっぱり食べ物だ。
水のカーテン「鍋ヶ滝」
小国ゆうステーションから車で15分ほどの距離にある絶景「鍋ヶ滝」。ここまで来て、鍋ヶ滝を素通りするという選択肢はないだろう。幅およそ20mの水のカーテンからマイナスイオンをたっぷり浴びる。新緑からの木漏れ日は、なんとも幻想的な雰囲気を醸し出す。
鍋ヶ滝は、なんと滝の裏側から見ることもできる。長い年月をかけ、やわらかい地層が水に削られてできた滝裏の広い空間。滝の裏側を通って対岸まで歩いて行けるため、「裏見の滝」とも呼ばれている。裏側から滝のカーテン越しに見える新緑も神秘的で美しい。
入園料は、大人(高校生以上) 300円、小人 (小・中学生) 150円。駐車場あり。
ジャージー牧場直営「カップル」
この旅のシメは、やっぱり小国ジャージー牛乳のソフトクリーム! 小国ゆうステーションから車で10分ちょっと、国道387号沿いにある農家レストラン「カップル」はジャージー牧場直営のお店だ。ここでいただくのは、手作りの『ジャージーソフトクリーム(ワッフル 400円)』。まろやかな口当たりの中に濃厚なコクがあり、甘すぎずミルク本来の味わいを感じる。これぞ至高のソフトクリームだ。
手作りプリンの上にジャージーソフトクリームをのせた『プリンソフト(500円)』も超おすすめ。最初はソフトクリームのみを堪能し、途中からプリンのカラメルソースをからめつつ……。どちらもそれだけで美味しいソフトクリームとプリンを一気にいただく、幸せなスイーツ。
日帰り モデルコース
以下、筆者がオススメするモデルコース(福岡からの日帰り想定)。何を重視するかによってアレンジが必要だが、参考にしていただきたい。
<日帰り>
07:00 福岡を出発
09:00 鍋ヶ滝
10:15 風の舎〜温泉街散策
11:00 温泉 1つ目(徒歩圏内の新明館など)
12:00 ランチ
13:00 温泉 2つ目(山みず木は外せない!)
14:15 平野台高原展望所
14:30 温泉 3つ目(三愛高原ホテル、こうの湯など)
16:00 カップル
※各スポットの場所は最下部のMAPを参照。
※時間は目安です。
※営業時間や定休日は事前にご確認ください。
1泊2日 モデルコース
黒川温泉は日帰りでも楽しめるが、せっかくなら1泊2日でゆったりと過ごすのがオススメだ。ということで、スケジュールに余裕をもった1泊2日のモデルコースがこちら。
<1日目>
08:00 福岡を出発
10:30 風の舎〜温泉街散策
11:30 ランチ
12:30 温泉 1つ目
13:30 スイーツ(+散策の続き)
14:30 温泉 2つ目
16:00 宿にチェックイン
<2日目>
09:00 温泉 3つ目
10:30 平野台高原展望所
11:30 そば街道でランチ
12:30 道の駅 ゆうステーション
13:30 鍋ヶ滝
15:00 カップル
※各スポットの場所は最下部のMAPを参照。
※時間は目安です。
※営業時間や定休日は事前にご確認ください。
MAP
この記事でおすすめしたスポットをMAPにまとめました。
(→ Google MAP で開く)
[文・写真]山下侑一郎