初心者でも「モネ展」を楽しむ方法 混雑状況も|福岡市美術館

モネ展12月22日に開幕し、2月21日まで福岡市美術館で開催される「モネ展」。先行して開催された上野の東京都美術館には、75万人以上が来場したという。九州のモネファンにとっては、待望の美術展だ。

クロード・モネといえば、多くの西洋画家の中でも抜群の知名度を誇り、日本にもファンが多いので、改めて説明の必要はないのかもしれない。しかし、今回のモネ展は「究極のモネ展」とも称されるほど。「絵画になんとなく興味があるけど面白さがよくわからない」という人や、「モネという名前は知ってるけど、しっかり作品を見たことがない」という人にも是非おすすめしたい美術展だ。

印象派は奥が深い

「印象派イヤー」とも言われた2010年以来、すっかり印象派に魅了され、モネを始め、いくつもの印象派展を見てきた筆者が、「モネ展」の魅力をできるだけ分かりやすく解説します。

クロード・モネって誰?印象派って何?

クロード・モネは、「印象派」を代表するフランスの画家で、最も有名な代表作は「睡蓮(すいれん)」。モネの特徴を端的に表現した呼称がある。それは、「光の画家」。モネはその生涯をかけて、光や色彩の変化をキャンバスで表現し続けた画家なのだ。

印象派とは、19世紀後半にフランスで生まれた画家たちの一派。「印象」という言葉から抽象画をイメージする人もいるが、実際には印象派は写実主義の流れを受けている。それまで絵画といえば、聖書や神話などを描いた「歴史画」が評価されていたが、印象派の画家たちはキャンバスを屋外に持ち出し、日常の風景を描き出した。また、印象派以前の絵画では、筆跡を残さないことが良しとされいたが、モネ同様、印象派の画家たちは、大胆な筆遣いで光や色彩を表現した。そういった意味で、印象派とは、絵画史の中でひとつの大きな転換期、革命でもあったのだ。

 

注目すべき作品は?

《印象、日の出》
九州では初公開の本作品は、「印象派」という言葉が誕生するきっかけとなった歴史的な絵画。しかし、発表された当初は、あまり注目されていなかった。有名な話だが、ルイ・ルロワという批評家は、この絵を見て、あまりにラフなタッチに驚き、タイトルの通り、印象でしかないと酷評した。皮肉なことに、そのことがきっかけで、「印象派」という言葉が後に定着していくことになる。

(2月7日に追記⇒)この絵を直に見ると、印象派ファンとしては、やはり感慨深いものがある。描かれた「朝もや」は、当時の「印象派」とリンクして見える。この絵は、印象派の始まり(朝)であるのだが、当時はまだ正当な評価を受けていなかったという意味では、「もや」の中だったのだ。モネ後期の作品と比べると、その特徴である大胆な筆致も、どこかまだ未完成だったのだろう。
展示期間:2016年2月4日(木)〜2月21日(日) ※写真は「モネ展 福岡」のHPを参照ください。

 

《ヨーロッパ橋、サン=ラザール駅》
当時、産業革命の影響を受け推し進められた都市改造計画によって、パリは大都市へと大きな変貌を遂げた。そんな中、ガラスと鉄で建てられたパリ随一のターミナル「サン=ラザール駅」は、“近代化の象徴”だった。印象派の画家たちにとっては格好のモチーフとなり、モネもすっかり魅了された。モネといえば、「睡蓮」や「ルーアン大聖堂」などの“連作”が有名だが、「サン=ラザール駅」は、モネの連作の原点とも言える。

興味深いことに、この絵にメインで描かれているのは、近代的な駅舎でも汽車でもなく、濛々と立ち上がる蒸気なのだ。モネは、この蒸気を描くため、駅長に頼み込み、大量の石炭を汽車に詰め込んでもらったそうだ。この絵の前で静かに立ち止まり、じっと眺めていると、目に見えない轟音や、熱気、匂いといったものが、画面から伝わってくるのを感じる。
展示期間:2015年12月22日(火)〜2016年2月3日(水) ※写真は「モネ展 福岡」のHPを参照ください。

 

《睡蓮》
モネの代表作として有名な「睡蓮」は、モネ晩年の連作で、その作品群は300点にも及ぶ。白内障を患い、失明の危機とも戦いながら、死の直前まで情熱をもって描き続けたのが、この「睡蓮」だ。印象派の絵の中でも特に「睡蓮」を観る時は、ぜひ、近くからと遠くから、その絵を見比べてみてほしい。近くから見ると、様々な色が粗いタッチで重ねられていて、何を描いているのかわからない。遠く離れてみると、水面の動きや、光と影、色彩が繊細に表現された、立体的な絵が現れる

睡蓮の展示スペースには、絵の目の前に椅子が設定されている。そこに座り、じっとモネの世界に浸る。それが、モネ展の楽しみ方だ。
※写真は「モネ展 福岡」のHPを参照ください。

 

展示期間に要注意

今回のモネ展の目玉ともいえる「印象、日の出」。実は、展示期間が限られている。「ヨーロッパ橋、サン=ラザール駅」との入れ替え制になっていて、各展示期間は、以下の通り。事前にチェックしておかないと、せっかくモネ展に行ったのに目当ての作品が無いなんてことになりかねない。ちなみに筆者は、事前販売されていた「前期後期セット券」を購入済み。

 《ヨーロッパ橋、サン=ラザール駅》 : 2015年12月22日(火)〜2016年2月3日(水)
 《印象、日の出》 : 2016年2月4日(木)〜2月21日(日)

 

音声ガイドは必須

美術館に行く時は、ぜひ「音声ガイド」を借りてほしい。有料(520円)だが、漠然と作品を観て回るだけではわからない、その作品の特徴や、その作品にまつわる物語を知ることができる。筆者は、音声ガイドやガイドブックなどで、作品や画家の背景や有名な画家同士の交友などを知るようになって、より一層、印象派の虜になった。

音声ガイドは田辺誠一さん

今回の「モネ展」の音声ガイドの声は、田辺誠一さん。オフィシャルキャラクター「かっこいいモネ」のイラストも田辺さんが描いたもの。Twitterなどで有名になった「画伯」の力作。

 

気になる混雑状況

福岡市美術館<1度目の訪問:前期>
開幕翌日の休日、12月23日のオープン時間(9時半)の5分前に到着したところ、入館待ちの列は100人ほど。ほぼ待ち時間はなく、スムーズに入館。会場内もほとんど混雑していなかったので、ゆっくり、じっくり鑑賞できた。東京なら、30分~1時間待ちで、会場内も大混雑だろう。

<2度目の訪問:後期>※2月7日に追記。
「印象、日の出」の展示が始まって最初の土曜日、2月6日の10時頃に到着。美術館の駐車場は9割ほど埋まっていたが、特に待ち時間なく入館。入口付近や「印象、日の出」の辺りはやや混雑していて、全体的に前期よりも来場客が多いが、それでもストレスなく見て回れるレベルだ。ちなみに、「印象、日の出」の展示スペースは、立ち止まらずに流れて行く列と立ち止まってじっくり見れるスペースが区切られているので、止まってじっくり見たり、歩きながら最も近くで見たりを繰り返すこともできる。

ROYALなら前売りチケットの料金で

前売券を買いそびれた人に朗報。ROYALがモネ展とタイアップしたキャンペーンを実施中で、ROYALグループ各店に設置されている割引チラシを福岡市美術館に持参すると、当日なのに前売券の料金でチケットを購入できるそうだ。詳しくは、HPにて。

福岡市美術館のすぐ隣の大濠公園内には、ROYALグループの「Royal Garden Cafe」や「Pinkberry」がある。モネ展チケットの半券で、飲食が10%オフというサービスもあるので、利用するとお得だ。

 

京都、新潟でも!巡回展情報

モネ展は、福岡での展示が終了すると、京都、新潟へと巡回する。東京、福岡で見逃した人も、まだチャンスがあるので要チェック!

モネ展 京都
会期:2016年3月1日(火)~2016年5月8日(日)
会場:京都市美術館

モネ展 新潟
会期:2016年6月4日(土)~2016年8月21日(日)
会場:新潟県立近代美術館

 

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